「もう夕食済んだ?」と母から電話が来た。
ちょうど私は服の整理をしながら服の趣味が少し母に似ているかもと思い、
そういえば厚切りのトーストやキャラメルタルトなどの好みもルーツは母かもと思い巡らしていた時だった。
済んでますよと応えると、
母は早いねと言いながら「あのね」とセキュリティの話を切り出した。
一通り話が済んだがいつものように「じゃあね、おやすみなさい」と言って電話を切る様子もなく
そしてまた違う話を切り出して来た。
いつも要件だけ言って切る母だから珍しいなと思いながら話に頷いていると
私の左利きや音痴なところも母ゆずりかもとポロポロ思い出してきた。
何より五十路を超えて着初めた着物も母の着物で働いている姿が影響しているのは間違いない。
そんなあれこれを思い出すきっかけになった夜の母の電話であった。